今年6月に社会人の昇段審査に合格した佐藤美帆さん。
今回のインタビューは恩師の山口先生との対談形式で「ふりかえり」をしてもらった。
――道場歴はすごく長くなりましたね。
美帆 8歳前からですから14年になります。
最初は「名探偵コナン」の蘭ちゃんにあこがれて、「空手やりたい」からのスタートです。
それで地元の浅草の某フルコンタクトの道場を外から見ていたのですが、怖くて入れなくて……。
それで母がMUGENを見つけてくれました。友達にも内緒でやりたいし、最初に体験に行ったら女性の先生だったので、これはいい、と思って。でも入門したら山口先生で「アレ?」と(笑)。
山口 いや、それは記憶違いだよ。確かに初めにお母さんから電話で問い合わせがあって、女性の先生はいますかと確かに聞かれたのを覚えているんだよね。
見学でまずは行きたいのだけれどという話だった。
それで偶然、その日が女性の先生に代行をしてもらう予定だったんだよね。
それで「次は体験」ということで、自分(山口)のクラスに体験にきてくれて。
体験レッスンでは終始無表情だったので(これは入らないな。。)と思っていたら、クラス後まさかの「気に入ったみたいです。」とお母さんからの話でした。
体験の時はお母さんも外に出されていたんですよね。本人が「お母さんに見られたくない」ということで。
なかなか変わった子でした(笑)
美帆 友達にも内緒ではじめたのですが、道場のみんなが話かけてくれて友達ができて、みんなで一緒に稽古して、合宿に行って、大会に出るのが楽しくて。キッズのころ思い出は良い記憶しかないです。
――キッズから一般クラスに上がってみてどうでしたか?
美帆 一般の部(大人)の組手は苦手でした。テイクダウンの技術、、これが戸惑いました。
キッズのころ、一度一般部の5人組手の相手をさせてもらいましたが、いきなりテイクダウンされてしまって…
昔は大会や演武会をキッズと大人で一緒にやっていたので、大人の組手や演武を見る度に格好良くて憧れていました。でも自分がテイクダウンを実際にやられてしまうと話は別で。
――今はかつての美帆さんと同じようなユース上がりの子たちが大勢いますね。
美帆 みんな本当にすごいと思います。
私の時は不安で仕方がなくて物怖じしていましたけど、今の中学生高校生の世代は、みんな積極的ですよね。
うまいですし。本当に凄いです。
山口 今の子たちは、恵まれているんだよ。
美帆や瞬の世代の頃に「課題」となっていた環境面のことを、指導者としてどうしても克服したくて、試行錯誤して今のような「ユースクラス」の誕生につながった。キッズクラスの後にいきなり社会人のいるクラスじゃなくてね。
通過点となるその世代の子たちのためのクラスを作らなければ、ずっと同じ想いをこの世代にさせてしまうと思って。絶対にやらなくちゃいけないと思ったんだよ。
まぁ、小学生の頃のテクニックが通じないというのは、仕方がないことで、美帆に限らず今の子たちも同じような悔しさというのは、良い意味で持っているみたいだよ。
そして美帆も今ではそういう世代にとっての「壁」にもなっている。ある女の子は美帆に通じなかったといって、その後テイクダウンの技術を一所懸命にやろうと思い直したんだよ。小学生時代の経験にあぐらをかかないで頑張ろうと。
みんな同じ経験を味わっている。
――審査会や大会、演武で大活躍だったように思いますが…
美帆 それもプレッシャーになっていました。名前だけは変に知られていて、ちょっとしたことやっても「さすが」とか言われたり…。「なんでもできるでしょ」という感じで。
山口先生にも一回「やめたい、ダンスをしたい」と相談して、1か月考える時間をもらって、先生と両親と話し合いもしました。結局、白帯に戻って続けることになりました。
山口 基本的にうちの道場は、子供を誉めるからね。きっとほとんどの子がベタ褒めされて育っているはず。これは文化だよね。
美帆が辞めたいと言った時は、自分は「辞めさせてあげてほしい」と思っていた。
だって、自分でせっかく決めたことなんだから。
師匠としては、やめるとなれば本当に寂しいけど、意思決定を自分でして、その結果から自分自身の人生の学びを得てほしいというのは、空手の枠をこえて大切にすべきことだと思っていることだからね。
1ヶ月週1で空手をやりながら考えて、結局そのまま継続していくことになったよね。それはそれで嬉しかったけど、複雑だったな。
――どうやって乗り越えたのですか?
美帆 じゃあ、テイクダウンされない方法を考えようと。投げにもっていかせない技術を磨こうと思いました。
山口先生のスパーを見て、構え方や独特の空気感、相手が入れない空間づくり、そうした技術を身に着けよう、と思ったんです。
そうしたら空手が楽しくなってきました。
―――そして黒帯へチャレンジしようと?
美帆 いえ、黒帯は受けるつもりはなかったんです。
やっぱり突きが苦手で…。でも親も「大学在学中に黒帯取れば、ひと段落つくね」とか話すし、どうしようかと迷いましたし、先生にも「どうする?」と聞かれて挑戦しようかと。
山口 アレもいや、これもイヤで、なかなか大変な生徒ですよ……苦笑
まぁ、結局は空手が好きなわけだから、好きで続けていく中ではいろいろなことに立ち向かってブレイクスルーしていくシーンというのは出てきます。これは3歳のこどもから50代のオトナもみんなそう。
美帆 「じゃあ何をすればいいの?」から始まりましたが、突きもやっていくとフォームの重要性に気づきました。
山口先生のフォームとの差を埋める、基本、型と同じく、細かな部分を自分で固めていく作業に取り組みました。
そうやっていく中で少しづつ「突き」もつかめていったように思います。
――昇段審査の課題は「テイクダウン」でしたが。
美帆 そうなんです。「投げられない」をテーマにしてきたのに「投げる」が課題になってしまい「ムリ、終わった」と思いました。
でもこれも「突き」と同じでした。
一つやりたいことを見つけると、私の場合は「釣り込み足」だったのですが、それを成功させるために何をすればいいか、方法を考え、ひたすら取り組むことで道が開けた様に思います。
実際には、技をかけても倒れないことばかり、ヤバいなあと思っていましたが、思い切りいって倒れなくても、次にどうするか考えればいいんだ、と思えるようになりました。
試験の2日前にようやく納得のいく投げの感覚ができたので、本当にギリギリでした。
山口 特練クラスに数ヶ月間参加してもらいました。
そこには美帆の後輩の佐藤翔太くんや林辰壱・辰太郎くんという、K-1などの外部のコンペティションで日本一になっている子たちもいます。
彼らと共に学びの姿勢に入ってもらおうと思いましたが、本当によく頑張っていたと思います。
「うまいね」と言われることがイヤだと言いながら、苦手な世界も「ムリ」という、この矛盾したゾーンにいることから脱して欲しかった。
師匠としての視点ではそう。
それから空手仲間として、とにかく一緒に頑張りたかった。
彼女が子供の時は、そうやって苦手なことでも前向きに取り組んでいたんです。
『好きな世界」だからこそです。
彼女は本来「努力できる才能」が非常に優れているんです。
そこに一番の才能と魅力があります。
――本番はクリアできましたね。
美帆 「支え釣り込み足」や「蹴り足キャッチング(からの軸足払い)」も決まりました。
稽古ではテイクダウンでもなんでも「やってみることが楽しい」状態になってきていましたし、組手でも変なことは考えずにやりたいように、楽しくやろうと思い、今回の試験に臨みました。
考えることが楽しくなって、以前のように、周りの人に「おおーっ」と言われるような組手をしようとは思わなくなっていました。
――これからの目標は?
美帆 これまでサポートしてくれた両親も、私自身もひと段落という感じです(笑)。
だからなかなか次は考えられなくて…。でも稽古が楽しい。
なので、普通に日々稽古を重ねてゆき、古参の黒帯の方々と並んでも恥ずかしくない黒帯になれるように精進します。
山口 今回の審査会では本当によく頑張りました。
ある意味この”スランプ”も本当に長かったですが、美帆はよく頑張り抜きましたよ。自分も安心しました。
あとはうちのベテランの人にたちは、後輩・後続の方たちをとても大切にしていますし、同時に率先してチャレンジする姿を見せています。
美帆には今後もそれを見習ってほしいと思っています。
美帆 古参の人は今でも話しかけてくれるし、会えるのが嬉しいです。
また今はたくさんの方が入会されてきて、私にもいろいろな質問をしてくださっています。
それで審査会などで頑張ってくださっていたりして、私もお役に立てるのがすごく嬉しいですし、励みになっています。
引き続き宜しくお願い致します。
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