ニュース 2023.01.01

【業務提携と道場移転】日本セラミックス榎園昭典社長との対談

社会価値を追究する思い、変革への情熱が一致して生まれたコラボレーション


山口 
榎園さんとの出会いは無拳流空手の道場でしたね。まず息子さんが入門されて、偶然ですが私の息子と同年で、一緒に稽古するうちに仲良くなって。そして榎園さんも、ボクシングクラスから初めて空手もスタートされました。

榎園 私はまったく武道、格闘技の経験がなかったのですが、息子が3歳から7年間、道場に通う姿を見ていて、山口先生のご指導や、考え方に非常に共鳴しました。
コロナ期になり、在宅が多くなり道場に伺う機会も増え、その中で佐藤翔太君や林辰壱,辰太郎兄弟とも交流が生まれました。
彼らのK-1やRIZEでの活躍に触れる中、最初は個人的に彼らを支援していました。
また、彼らの指導をしている桑原拓選手(大橋ジム)のボクシングの試合で感動したり、彼のボクシングセミナーを体験したりして、今年から自分でもやってみようかと。

山口 この数年、無拳流の新世代が著しい成長を遂げました。彼らが指導を仰いでいる大橋ボクシングジムの桑原拓選手(現在東洋太平洋チャンピオン)、平岡アンディ選手(現在日本&アジアWチャンピオン)も、試合がなかなかできず、コロナ期は苦しかった。

そうした中、榎園さんがセミナーなどで彼らに接するたびに「無拳流の少年たち成長しましたね。プロボクサーの皆さんは技術もすごいけれど、人間として礼儀正しいんですね。K-1の卜部巧也会長はとても理論的なんですね」とすごく感動してくれました。

私の中には空手、マーシャルアーツを通じて、技だけでなく人間性が磨かれるという信念があります。

そこに共感いただいたと感じ、とてもうれしかったんです。

試合に勝つなどの栄光の面だけでなく、辛い、苦しいところをきちんと見て、感じてくれる。こうした共通の感覚があるから、さまざまなお話ができました。

そして、榎園さんのすごい所は、ご自身でも実践することだと思います。1年間地道にストイックに稽古されて、今とてもきれいなジャブを打たれるまでに積み上げられました。現在のお仕事も現場から始められたとか。

榎園 私はもともとアメリカで会計士を17年やっており、妻の父の会社の後継者として日本へ戻り日本セラミックスへ入社しました。

日本セラミックスは「築炉」を行う製造業です。モノづくりは現場を知らねばなりませんから、最初は工場からです。

25㎏の原材料を運び続けるなど、ハードな現場です。しかも高度な技術を扱うので、たたき上げの職人気質の方が多い。

なかなか大変でしたが、その中でしっかり学ばせていただいたことで、経営ができるようになったと感謝しています。

無拳流にも最初はキッククラスから、11月から空手に正式入門しました。

先日初めての昇級試験を受けたばかりです。7年間、息子を通じて感じてきたことが、自分自身で稽古することで、今本当にマーシャルアーツの素晴らしさを実感しています。

山口 現場、現実、体験、継続、忍耐、学び、感謝。こうした武道に通じるメンタリティとともに、榎園社長と語り合う中で通じ合ったのは「変革」への思いでしたね。

榎園 日本の製造業は、現場の高齢化が進んで、高度な技術も継承者がいない、といった状況です。

当社は、金属溶解炉の耐火材を供給し、炉の解体から建築―「築炉」―も行っています。日本の硬貨鋳造のほとんどに関わり、またマンホールや電線、携帯電話などに活用されており、社会インフラを支えると言える仕事です。

しかし、現場を支える若手が足りていません。人材育成の在り方を変えねばならない、という問題意識がありました。

そんな中、山口先生を通じて、武道、格闘技という身体的にも精神的にも厳しい世界で頑張る若者の姿を知りました。彼らを支援することで、若い世代を応援する企業姿勢を示すとともに、彼らのセカンドキャリアを当社ではぐくんでいだけないか、という着想が生まれました。

山口 私も、空手界、格闘技界は変換期にあると考えていました。

かつてのように強さへの憧れだけ、一瞬の試合での栄光だけではなく、健康や人とのつながりと大事にした、社会的に継続した価値を提示することが必要だと。

そこで無拳流の「変革・改革」に着手したんです。本来「道」といわれる厳しいものの良さをどうやって伝えるか。「武道は生き方」であるという思いは変わりませんが、それを重荷ではなく、どう実感してもらうか。それをテーマに取り組んできました。

こうしたことと、榎園さんの会社の変革への問題意識に強烈なシンパシーが生まれ、今回の無拳流と日本セラミックスさんとの業務提携と、新道場の設立というプロジェクトにつながりました。

 

■新しい形の情報発信の場となる「新道場 powered by 日本セラミックス」


山口
 私は、格闘技界でいろんなジムの方が、自身の経営している店舗で現役選手に働いてもらうという形をとっている事例を見てきました。

その中で成功するケースの要因の一つに、経営者もまたその世界を愛好して実践しているということが挙げられます。
やはり経営者が、その世界に自身も汗を流して共鳴しているということが大切です。

また、選手生活をやめた後もそのスポーツを愛好できた方がいいですね。
家族や仲間にそのスポーツを教える機会を作ってあげたり、後進の現役選手の試合を観戦などをして、その世界とつながっていられる機会があった方がいい。

これがないとなかなか継続しないものです。

今、榎園さんご自身がマーシャルアーツを学び、感動し、選手をリスペクトしているということ。
そしてお仕事は肉体的には厳しいけれど社会的意義のあるものだという、マーシャルアーツとの共通点。これらがあった上で、段階を踏んでいく必要はあると思いますが、社員=選手たちが「マーシャルアーツ・ライフ」を続けていける環境・体制を作れるのではないかと構想しています。

榎園 当社は埼玉、奈良に社員寮を完備していますし、将来は社員が地元の子供たちにマーシャルアーツを教える、というような機会も作っていけるのではないかと思います。これは企業の地域貢献にもなります。

山口 道場でも加齢やさまざまな要因で限界が生じても、指導やコミュニティの中でやりがいを見いだせるものです。
私たちが協力し合うことで、自分の好きなことを認められて、社会的意義のある仕事に従事する、という社会構造、仕組みを作っていけるといいですね。その場にいる人の士気を上げることが何より重要です。

特に日本セラミックスさんの場合、照明をきちんとした角度で当てると、使命感、誇りを持てるお仕事だと思いますから、マーシャルアーツの選手たちがセカンドキャリアとしていく場となりえるでしょう。

榎園 これまで当社は大きく社会へアピールしてきませんでしたが、原宿・表参道という日本での情報発信基地に、当社の企業姿勢――アスリートを支援する、人生のやりがい、セカンドキャリアをきちんと考えるーーを示す道場があれば、自分たちの仕事にきちんと照明を当てる、ブランドを再構築することができるんじゃないかと思っています。

具体的になりますが、当社の仕事の性質上、1日単位で動くことが多いのです。練習の兼ね合いがある現役のアスリートの方にも向いているかと思います。臨機応変な対応が可能ですから。

山口 「場」はとても重要だと思います。無拳流でも空手道場でありながら、リングを作り、マスのキックルール大会「RINGΦFIGHT」を行うと非常に盛り上がる。やはりリングという「場」を作り、そこに入ることで生まれるものがあるんです。新道場でのさまざまな活動においても「Powered by 日本セラミックス」で、ぜひ新しいムーブメントを起こしてもらおうと考えています。

榎園 私も2回ほどリングに上がりましたが、非日常の体験をさせていただきました。
小さいころからボクシングなどは見てきましたが、寸止めのマス・ルールとはいえ、まさか自分があのリングでボクシンググローブをつけて相手と戦うことになるとは思いもしませんでした。

今のところ1勝1敗ですが、とても学びがありました。1回目何となく勝ってしまいましたが2回目はテクニックもハートも及ばず負け。自分自身に足りないところを痛感でき、そのことが何より嬉しいですね。

山口 勝つ自慢はだれでもできますが、負けたことを貴重な経験だ、といえる大人、経営者は素晴らしいと思います。

人が立ち上がる、生き生きとする「場」がこれからの時代、とても重要です。
気持ちを上げる、歩みだすきっかけを作ることです。

ただ環境を作るだけでは人は動きません。
まず、どうしたらその場へ入ってくれるのか、そこに熱量と思考を注ぎこまなければなりません。

たとえばRINGΦFIGHTでは「花道」を設営しました。
参加者が10秒も歩かないこの場所でこそ、一人ひとりの人生のドラマ、ストーリーが生まれると考えたからです。

無拳流が10年培ってきた「一人ひとりが主役」という理念、カルチャーから新しいマーシャルアーツの形を発信する新しい道場・ジム・スタジオを創っていきたいと考えています。

榎園  マーシャルアーツと当社の事業には「金属(ハードさ)・熱・淡々とした日常の積み上げ」というカルチャーの重なりを感じています。山口先生にデモのCMイメージ動画を作っていただいたんですが、このイメージがはっきりしてきました。

 

山口 私は生産的である、何か新しい事を生む、ということが業務提携では必要なことだと思います。
具体的には、新道場からの発信によって、多くの人と人をつなぎ、そこから企業を支える人材も輩できる、という循環を作りたいと思います。

榎園 今回の提携事業は当社としても、自分自身としてもまったく新しいチャレンジになります。

長くビジネスの世界に身を置いてきましたが、山口先生と将来のビジョンや夢を語り合う中で「お金に変えられない価値」にも大きく目を開くことができました。

企業である以上利益が軸にあります。その中で、人の成長や人生の支援など、損得を超えた価値を生み出し、それが社会へ、ひいては企業へ還元されると思います。

山口 変革への情熱と柔軟性、大きな意味での社会的価値への視線、事業軸をずらさず、和を作っていく。こうした榎園さんの度量の広さがあってこそ育まれるプロジェクトです。

榎園 これからの若い世代へのより良い環境を提供していく。この場所から広い世界を見せてあげることができればと思っています。

山口 息子さんも先日黒帯を取得。さっそくご自身も黒帯への意欲を新たにされています。この情熱の継続こそ、事業の継続の源になると思います。これからも、空手道、事業ともに一緒に頑張って参りましょう!

 

 

 

 

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