とても素晴らしい演武会でした。(約300点の写真はこちら)
今年は2月にも90名規模の演武会をおこないましたが、今回はイベント繁忙期の中での演武会。
あえて参加人数は少人数になるであろうことは予想した上で、「それでも必要」という信念のもとに開催しました。
しかも参加者にとっては「舞台」という特別な場所が大切。
そこでようやく借りることができたのが今回の新宿のホールでした。
もともと演武会は18年ほど前の2006年の秋に、麻布十番に当時借りていたスタジオでおこなったのが最初でした。
「組手は得意じゃないけど、基本や型は好き」
こういう一人の少年の切なる思いを汲んで、小さく20名ほどではじめたのが無拳流の演武会でした。
この少年はこの居場所ができて以来、組手にも積極的にチャレンジできるようになり、その後黒帯も取得しました。
今回の演武会をふりかえっていきたいと思います。
①オープニング
先ずオープニングは他の支部から移籍をした女の子でした。
「原宿本部道場で型や武器を本格的にならいたい」
こういう切なる想いをつのらせて、8月から心に決めてこの道場に通うようになってくれました。
それまでにやはり組手のスランプなども感じていたようですが、この道場で毎週ヌンチャクなどの練習に取り組むようになると、組手の動きも変わってきました。
“何か得意になれるものを見つけ、興味をもって向いあう”
このことはとても大切です。
なかなかできなくても、何度失敗しても、興味好奇心をもってずっと取り組むうちにできるようになる。
こうした経験を手に入れることができるからです。
8月から練習を続けて、夢見ていたオープニングを見事に演武しきることができました。
素晴らしい経験となったことでしょう。
②幼児クラスの発表
とにかく愛くるしいみんなの演武でした。
「カラテがだいすき」
その気持ちが一番大切なことです。
大好きなことをみんなの前で、思うように発揮して、たくさんの温かい拍手をもらう。
この経験がどれだけ子供たちをヒーロー、ヒロインにしてあげられることでしょうか。
失敗をおそれずに伸び伸びとやる。
こんな小さな子たちからも大切なことを、改めて教えてもらったように思います。
ちなみに、幼児クラス担当の佐藤先生、アクション用のポリエチレンの棒を運び忘れてしまったことに演武会の最中に気がつきました。
どうするのかな…と思っていたら、「山口先生、お願いします!」と無茶振りされました。(笑)
木の棒は小さな子ほど直感で怖がってしまうのですよね…
確かに担当の佐藤先生が、万が一にでもこのイベントで子供たちの怖い先生になってしまってはいけない。
めちゃくちゃ覇気を消して、こどもたちに立ち向かってもらってもらいました。
みんなに笑顔で倒してもらって安心しました。。
③小学生基本発表・コンテスト
4つのカテゴリーに分けられたこの演武発表会。そして基本コンテスト。
先ず一番に伝えたいのは、「全員が素晴らしかった」ということです。
単なる”社交辞令”ではありません。
これは組手大会の時もそうなのですが、自分の空手を精一杯表現できることが素晴らしいのです。
今回は若いインストラクターたちから
「基本コンテストを復活させてほしい」
という強い提案があったので、採用をさせていただきました。
たとえ入賞できなくても、あれがとてもよかった、モチベーションになった、そういう積極的な見解が複数人からもたらされました。
彼らのいうように、基本の発表はコンテストの要素をいれたことで、非常にヒートアップしたと思います。
1年生カテゴリー、2年生カテゴリー、小学中学年、小学中高学年、高学年と年齢が上がれば上がるほどに、レベルもあがっていくのはもちろん、「心技体」の一致した姿が強まっていったように思います。
正直、高学年まではどの子たちにも一長一短あり、若干の差で決勝トーナメント進出者が決まり、決勝トーナメントでもほんの僅かの差で順位が決まりました。
査定の仕方としては、どうしても「ミス」を発見していくことになります。減点方式です。
これは審査をする方としましても、誰もが頑張っている中、気が進まない作業ではあります。
しかし最後の高学年部門の決勝で、とても素晴らしい光景がありました。
最後は三人の決勝から、最後は甲乙つけ難い2名での優勝者決定戦。
ここに残った二人は驚くべきことに、予選、決勝1ラウンでみせていたそれぞれの僅かなミスを、互いに競い合っているうちにまるで互いに「補完」しあうような”競演”となりました。
何度かの延長をしても、ここまでくると脱帽です。
二人に空手稽古のあるべき姿を見せてもらったように思います。
とても感動しましたし、今後も目指していくべき無拳流空手道の姿がそこにあったこと、とてもうれしく思いました。
④小学生板割り
後半となって小学生たちの板割りの発表でした。
これが簡単なようで難しいのです。
でも、達成した時の誇らしい気持ち、そして感動は何にも変え難いものがあります。
代表がかつて師事したことのある古流の先生は「板を割ることが、空手の威勢を示す、見栄をはるためであるといのは間違っている。そこに感動を覚えることが大切なんだ。それで日々の基礎からの稽古をまた坦々とやろうと思えることが大切なんだ」
そうおっしゃっていたことがあり、よく合点がいったという経験があります。
大切なことは”自分にもできた”という感動をいだくことです。
ときには上手くいかなかったという反省もいだくこともあるかもしれませんが、緊張する中、気を凝らして一気に板を蹴破るという経験が、また明日へのモチベーションになってくれたらと思っています!
挑戦した皆さん、とてもカッコよかったです!
⑤女子武器術
小学生の女子武器術。
“幼くても本気”
この覇気、心意気がカッコよかったですね。
幼年期の可愛がられる年代から、自らカッコよくなりたいと意識する年代へ。
ヌンチャクの型も大変でしたが、棒術は従来は高学年になってから挑むものでしたが、今回はあえて5歳、6歳の子たちにもチャレンジしてもらいました。
毎月1回の武器術クラスを、夏からしっかりとこなして練習を重ねて、演武会直前もみっちりと練習を重ねましたが、よく毎回の稽古を集中して頑張り続けました。
演武会という目標をもって、長く取り組んできたものを、満を待(じ)して表演するという経験は、とてもかけがえのないものになったのではないかと思います。
無事に終えた後は、きっと一つの”燃え尽きた”状態になったのではないかと思います。
“その時”にむかって、一所懸命に駆けてきた女子武器術チームの子たちを、心から労わせてもらいたいと思います!
よくやりました!
⑥ジュニア・ユースクラス 型発表
基本の発表会でも圧倒的な存在感を示してくれたユースクラスの子たちでしたが、学業などが忙しい中をチームワークで励まし合いながら練習をしていました。
とてもよいパフォーマンスができたのではないでしょうか?
まだまだユースの先輩たちや、大人たちの芸域には達しなくても、「自分たちで協力して創り上げていく」ことにプライドをもって頑張っている姿に、彼らの大きな成長を感じました。
練習中に体調不良などもあって、なかなかうまく覚えられなくなってしまった子を、練習後にみんなで励ます姿がありました。
「みんな完全じゃない。だけどみんながいるから完全を目指せる。それぞれの存在が必要なんだよ」
そういって、また頑張ろうと肩を叩いて励ましあう姿こそ、かけがえのないものです。
ある意味、一番苦戦していたチームたちでしたが、「無事にみんなで成功したら、焼肉いこうか」と代表が誘ったこともあったのですが、昨日は終演後にさっそくみんなから「お願います!」と元気のよい声が集まりました。
よし、行きましょうか。
みんな、本当によく頑張りましたよ。
⑦社会人 基本応用&型
こちらも「型が大好き」な人たちが、この日のために仕事の合間をぬって練習に練習を重ね続けました。
”立ち方ひとつとっても全然むずかしい”
昔は立ち方3年とも10年とも言われましたが、実際に型は年月歳月を重ねて練り込んでいってこそ鍛えられます。
「型と組手は別物」
巷よく言われることですが、型を練り込むことで、技術心術体術を完成していく高レベルな門人が、無拳流には複数いることは確かです。
空手だけでなく、キックやボクシングで全日本の舞台で活躍をしている若い選手たちも、みな型から強さを養っています。
今回は昔から積み重ねてきた門人と、新たに型の世界を追求したいと望んだ人たちとのコラボでしたが、とても貴重な経験を重ねることができたのではないでしょうか。
“基本が大切”
そのことを改めて深く感じ入る体験ができた。
人の前で演じるという遠心力にふりまわされそうになりつつ、自分の内側を問う求心力に押しつぶされそうにもなる。
この葛藤の中で、決して演舞ではない、演武というものを全うできるか。
有志のみなさんには、今後もいよいよ深掘りをしていってほしいと思っています。
お疲れ様でした。今週はお疲れ様会をしましょう!
⑧2度目の卒業
セミファイナルは「2度目の卒業」をむかえる女子高生の子の対人演武。
代表の山口が受け手を務めさせていただきました。
表演をおえた彼女がいった言葉。
「幼少から小6まで空手を続けました。自分に自信がもてなくなったこともあったけど、空手をやっている時の自分は好きだったことを思い出して、中3でまた空手を再開しました。久しぶりに戻ってきた道場は、みんながやさしくて居場所がありました。でもまた新しい挑戦をしていかなくてはいけません。今日見に来てくれた家族、そして友達のみんなに支えてきてもらったんだなと改めて思っています。皆様、本当にありがとうございます」
これから受験勉強に入る彼女は、2度目の節目(卒業)を迎えるにあたり、代表との演武がしたいと申し出てくれました。小さい時からの憧れだったと。
今までは組手の大会での活躍が目立っていた彼女ですが、まさか演武会で頑張ってみたいというとは思いませんでした。
正直、後にも先にもこうした演武は引き受けることはないと思いますが、いつも誠実に稽古に励み、謙虚に自分を空手に映しつづけた彼女の願いだからこそ、快諾をさせてもらいました。
勉学の合間をぬって、本当によく練習を頑張りました。
今まで練習の中でやったパフォーマンスを遥かに凌ぐ、素晴らしい発表をこの演武会でできたと思います。
今後の彼女の新たなチャレンジを、門下一同全力で応援させてもらいます!
お互いにがんばろう!
⑨ファイナル(武器三術)
そして最後は今年約10年ぶりに復帰をした女性門下生と、今や道場を代表するトップ選手たちの共演です。
キッズ時代に始めた空手、親御さんのお仕事の関係で海外へ引っ越しした後に、20代で社会人となって再び日本へ帰ってきた彼女は、「キッズ時代に演武会でやらせてもらったトンファーをもう一度やりたいです」と志願をしてくれました。
現在22年目の道場ですが、さまざまな人たちに時間をかけて愛好してもらっていることが、本当に嬉しくて仕方がありません。
また彼女の脇をかためる翔太先生は、キッズ時代には組手大会で戦う相手でもありました。
同じく脇を固める辰太郎(しんたろう)くんは、当時3〜4歳です。
その三人が圧巻の演武をみせてくれました。
交錯する棒、トンファー、サイ。
ファイナルにふさわしい、スリルと迫力のある最高レベルの演武。
この演武をみて、また新たな少年少女の夢が膨らんだのではないかと思います。
“時代から時代へ受け継がれる”
そうしたMUGEN KARATEであることを確信した演武会でした。
参加された皆様、ご観覧いただいた皆様、有難うございました!
次は来年の2月あたりに開催予定です。
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